音楽のその先にある表現力を映し出す−多くのアーティストのアートディレクション・デザイン・映像作品に携わる関山雄太インタビュー


ツアーに全同行して作られたドキュメンタリー ”mitsume tour 2014”

――次に、最近の活動において、おそらくアーティストの中では一番密接に仕事をしているミツメについてお伺いします。最初のきっかけはTASですか?

関山:möscow çlubがきっかけでミツメを知ってTASに出てもらいました。ミツメのTASの撮影は、撮影の日がたまたま百草団地の夏祭りで、今考えるとまだあんまりミツメのメンバーとは仲良くなれてなかった中、お祭りで一緒に呑んだりしました(笑)。あと、僕は団地が好きなんですが百草団地の有名な階段みたいになってる団地が、取り壊しになっていて入れなかったのがショックでした。ミツメはまだこの当時MVがなかったので、TASの映像がよくブログとかTwitterに載っていて嬉しかったです。そのあと連絡をもらって「煙突」のMVを手伝ったのが始まりですね。

――ミツメで気になったのは、関山さんのサイトの作品の中でディレクション欄にミツメの名前が入っているところ。それって最初に手掛けたKONCOSの3作品とミツメだけなんですよね。

関山:クレジットは特に意識はしていないんですけど、いろいろなアイディア出す行程で、ミツメからアイディアが出てくるのが多いんですよね。例えば「ささやき」というMVでは、「走ろう」とかを僕がはじめに出したとして、どこで撮ろうとか、どう終わろうとか、メンバーが肉付けする要望が多い気がします。Blue Hawaii Sessionもミツメの案で、YouTubeで新曲公開するって聞いてビックリしました。

約20分・全5曲のうち3曲が新曲公開されたスタジオ・ライブ “Blue Hawaii Session”

――インドネシア遠征や、ささやきツアーにも全部同行してますよね。

関山:インドネシアのBrilliant at Breakfastというバンドが来日したとき、ライブの対バンがミツメでDJが僕だったんです。そこで仲良くなって、インドネシアでミツメのライブが決まって、僕が撮影も兼ねて行きました。滞在中に「うつろ」のMVの撮影と、渋谷ネストのワンマンライブでフロアで流す映像をずっと撮ってました。

――ささやきツアーは最終的に『TOUR2014 [DVD+写真集]』となって昨年10月に発売されていますが、映像を見ると、関山さんのほかに、前回インタビューしたPAの馬場ちゃん(※馬場友美)、カメラマンのトヤマタクロウ君、物販・グッズ製作のGung Pang君、そしてブッキングにタッツ君(※仲原達彦/a.k.a. 月刊ウォンブ!)と川副君(※川副耕介/a.k.a. 在日ファンクmgr)が一同になって移動していて、あのチーム体制は一体感あってすごいですよね。

関山:このツアーのときはまわりの人間が全員フリーランスで、こんなチームってなかなか無いって思っていたので、その雰囲気がわかるように撮影しようって思っていました。だから編集のときにバンドメンバーだけじゃなく、同行した人全員にクレジットを出すようにしました。

――ささやきツアーでは、全公演を関山さんがひとりで撮影したんですか?

関山:ツアーファイナルの恵比寿リキッドルーム以外の映像は全部僕が同行して撮ったもので、リキッドルームは僕とTASをやっているメンバーのカメラマンが勢揃いで撮りました。全部で12カメラ入ってたのかな。

――そんなに入ってたんですか!

関山:そんなに入ってました(笑)。あと、本とDVDも作ったことがなかったので、わかんないことだらけで。ブックデザインはエディトリアルデザイナーの坂本真理がやっているんですが、出版社からではなく個人から大部数の本を印刷工場に注文をするなんてやったことないから、彼女と一緒に工場の担当者さんから細かい事を教えてもらって進めました。
あと、印刷工場には直接メンバーとタクロウと行って、写真集の紙はどういうのがいいとか選定したり、DVDの包装部分も工場に無理を言って特注で作ってもらったりしました。

mitsumedvd
ミツメ TOUR2014[DVD+写真集]

MV撮ったりデザインやったりする人間だから作れるインタビューがある(関山)

――最後に、最近立ち上げたインタビューサイト(CARELESS CRITIC)についてお伺いします。そのきっかけを教えてください。

関山:写真と動画がたくさん出ているかっこいいインタビューサイトが日本にないって思ったんです。PitchforkやNew York Timesのような海外メディアや、企業のキャンペーンページでは見ることがあるんですが…要は音楽雑誌の巻頭グラビアみたいなのをやってみたいなって思ったんですよ。

――たしかに、ウェブサイトのインタビューだと、他のニュース記事と同じようなインターフェースに文字や画像を落とし込んでいるもが多いですからね。今後はどんなインタビュー記事をアップする予定ですか?

関山:もうちょっと面白い切り口のものをやりたいと思ってますね。このロケーションでこの人たちを撮るんだ!っていう意外さとか、山川哲矢やトヤマタクロウなどの周りのカメラマンに、面白い写真を撮ってもらうことも目的の1つでもあります。あとは、MVを撮ったりデザインをやったりする人間だから作れるインタビューがあると思うんです。MVのオフショットとかCDデザインの素材ってファンなら絶対見たいって思うんですよね。

――それ…関山さんしかできないじゃないですか!

関山:そうなんですよ(笑)。例えば、PitchforkでもDaft Punkの記事にはMVの素材がたくさん使われてるんです。そういうのって普通のインタビューサイトじゃできないんですよね。

――たしかにそれは見てみたいですね。では最後の質問です。自身のTwitterで年始くらいに「節目の年にしたい」というTweetを見かけました。目標などありましたら教えてください。

関山:今年30になったんです。それが自分の中で大きくて。僕はわりと早くフリーランスになれたんですが、次の節目はこの歳だと思って。あと、いま一緒に仕事をしてくれる仲間がいて、それが本当に嬉しい事です。今年の目標は「甘える」なので、どんどん一緒に仕事をして失敗したり成功したりしたいです。


 デジタルの進歩によって、私たち一般人でも高画質な画像・映像を撮ることができるようになり、ウェブサイトも簡単に作れるようになった。だからこそ、そういった機能や技術を使い、伝えたいもの・作りたいものをどう表現するかという過程のディレクションは大変重要な役割ではないだろうか。DIYで活動するアーティストにとっても、関山さんのようなディレクションを請け負う人間が存在するのは大変心強い。そして、どんどん繋がりを大きくしているようにも見える。このサイトではアーティストだけに焦点を絞らずに、こうした立役者たちを追いかけていきたい。