どついたるねんのライブDVDが9月1日にAVメーカーHMJM(ハマジム)より発売される。その名も『どついたるねんライブ』。6月に完全招待制で行われた彼らのライブをハマジムの監督らが撮影した本作は、18禁のAVでもある。既に、AVとしてアダルトビデオ日本一決定戦「AV OPEN 2015」にハマジムとして出品が決定したほか、劇場版の公開も発表された。
　どついたるねんやハマジムの周りで何が起こっているのか。8月12日に新宿ロフトプラスワンで行われた応援イベントをレポートする。

文 / 小林ヨウ　写真 / 塚本弦汰

　『どついたるねんライブ』の応援イベントの冒頭にお披露目されたハマジムデビューの女の子の名前はさい子ちゃんと言うらしい。
　壇上に呼び寄せられて数分。一言二言、相槌のようなものを発して彼女ははけていった。

　不思議と、イベントが終わって思い出していたのは、15分くらいしか出ていなかった彼女のことだった。ふらっと連れて来られた彼女が、あまりにもこのイベントにシンクロしている気がしてならなくなって。
　梁井一監督による『どついたるねんライブ』、さい子ちゃんのAVデビュー、この日語られた色々は、端的に『劇場版テレクラキャノンボール2013』(外部リンク)以後のいくつかのはじまりの姿だったと思う。

　彼女を壇上に呼び込むまでに、カンパニー松尾は、回りくどいくらいの時間をかけた。彼女がデビューに至る過程、それがどういったことなのか。そのニュアンスを伝えるためにはいくつかの飛躍したエピソードをつないでいく必要があるようだ。彼女は通常のルートでのデビューではない。彼女は今のあなた達とほとんど変わらなかった、と松尾は客席に向けて言う。
　はじまりは昨年8月、阿佐ヶ谷ロフトで開催されたうしじまいい肉とカンパニー松尾らによる人生相談イベントでのこと。テレキャノを見て一般客として足を運んだ彼女は、AV好きの童貞彼氏を振り向かせるための方策について壇上で相談する。AV女優になればいいんだよ、という話も冗談交じりに出たものの、カンパニー松尾と彼女がツイッターでAV撮影に関する嘘のやりとりをすることで、彼の気を惹くことになった。
　話はなぜかそこで終わらない。いつしか、彼氏の気を惹く目的ではじめたtwitterで彼女はセクシーな自撮りを投稿するようになっている。そして彼女から松尾へ連絡が入る。彼氏がまだ振り向いてくれないので本当に撮影してください、と。

　「ヤルかヤラないかの人生なら、俺はヤル人生を選ぶ」というテレキャノのコピーは本編では相当下世話な形で描かれる。ただの洒落のつもりだったものが、実際はそうならなかった。コピーに引き摺られるように、予想外に作品を深刻に捉える人たちが多くいたのだ。さい子ちゃんもまたその一人だった。テレキャノと、その言葉に突き動かされて、会社を辞め、デビューへと至った。

　どついたるねんとハマジムを引き合わせたのもテレキャノだ。以前よりどついたるねんの活動を撮り続けてきた岩淵弘樹がメンバーにテレキャノを紹介し、ライブDVDを制作するまでが当日上映された岩淵の蔵出し映像によって説明された。初の共演となった2014年8月、阿佐ヶ谷ロフトでのテレキャノイベントに招かれた梁井はどついたるねんのライブを目の当たりにして衝撃を受ける。笑ってる場合じゃない、というのが彼の感想だ。

　そして今年、AVコンペティション、AV OPEN 2015へのハマジムの出品作品として、梁井はどついたるねんに話を持ちかける。ハマジムとしてAVのコンペへの参加は、2009年のAVグランプリ以来。奇しくもその時の出品は『テレクラキャノンボール2009』だった。

　延々続けてきた説明は、ただの筋道でしかない。『どついたるねんライブ』はこうした背景を遠く後方に押しやってしまってテレキャノの影などみじんもない。イベントで公開された冒頭約40分の映像に、それを確信する。
　本番前の事前説明で、痴漢強姦は犯罪ですが合意の上の和姦なら大丈夫です、と冗談混じりに観客を煽る梁井。ステージ前に貼られた白い幕に映されるVJ。出囃子に流れるニューオーダーの「THE PERFECT KISS」に重なる「セックス、カレー、ロックンロール」(「テレキャノラップ」)のループ。引き剥がされた幕。山ちゃんのシャウトがすうっと薄れて「MUSIC」のメロウなイントロへ溶けこんでいく。次の「ウーチャーハン2」でぐちゃぐちゃに入り乱れたフロアの中へ横山夏希と沢井亮が分け入っていく。激しく抱き合って、正常位でセックスしはじめる。元々ぱんぱんのフロアにちゃんとしたスペースなどない。2人の姿はオーディエンスの向こうに消える。むしろカメラマンの方が映像にはっきり写っている。きれいな寄りの映像が撮れるかはさっぱり分からないが、女優の正面でスタッフは必死にリングライトを持っている。山ちゃんはステージでスターマインを燃やし、「such a sweet lady」で前に出てきた浜は悪い笑みを浮かべながら2人の結合部を覗きこんでいる。フロアはみんながみんな勝手にやっている。その立ち込める熱気だけが映像に収められている。
　スクリーンの向こうでばらばらの衝動が原型を留めずどろどろ溶けていく。その原始的な姿に興奮している。

　その後のどついたるねんのライブを見ながら考えていた。テレキャノをきっかけとしながら、転がって転がって、もうそんな言葉を必要としないいくつものはじまり。
　次は誰だ。
　梁井はどついたるねんとめちゃくちゃなものを撮った。あの時の女の子はAV女優になった。次は、次は。それで、その次はお前の番じゃないって誰が言えるんだよ。