世代やジャンルを超えたアーティストが集結したMiMiFes! (ミミフェス! )ラストは大友良英と向井秀徳アコエレによる即興も。


6月5日、都内でフォトグラファーとして活躍する宇壽山貴久子(うすやまきくこ)が主催したMiMiFes! (ミミフェス! )に、大友良英、向井秀徳アコースティック&エレクトリック、Alfred Beach Sandal、Taiko Super Kicks が出演した。

“耳が喜ぶ音のお祭り”と題されたこの音楽イベントの出演者の共通点は、世代やジャンルは違えども、”自由かつ強靭な軸を持っている音楽”だと主催の宇壽山氏は語る。近年は若手のインディーズで活躍するバンドやミュージシャンのライブにも足繁く通う宇壽山氏だが、16年ニューヨークに滞在した経験を持つ。大友良英と接点を持ったのは2011年、ニューヨークで2009年に披露された『2台のギターと2台のアンプによるモジュレーション』に感動した宇壽山氏が、大友氏のウクライナでのライブ公演に伴って募集されていた同行カメラマンに応募したのがきっかけだったという。こうした両者のグローバルな活動が、滅多に見ることのできない世代とジャンルを超えた貴重な共演<MiMiFes! (ミミフェス! )>を実現した。

そしてその大友良英がトップバッターとして登場。2009年の発表以来となる『2台のギターと2台のアンプによるモジュレーション』が披露された。ステージ中央のテーブルにギターが二台置かれ、一台のギターにつき一台のアンプから音が発せられる。ステージ両脇にあるステレオから聴こえるギター・ノイズは、互いに干渉し、聴き方や聴く場所によって音が変わるインタラクティブな音楽だ。会場では、いったい何が起こっているのだろうとステージに目を凝らす者や、場所を移動して聴こえ方の違いを堪能する者など、観客は大友良英の演奏に釘付けとなった。

『2台のギターと2台のアンプによるモジュレーション』を演奏中の大友良英

『2台のギターと2台のアンプによるモジュレーション』を演奏中の大友良英


2番手、3番手に登場したのは、Taiko Super KicksとAlfred Beach Sandal。トップバッターの大友良英とは親子ほどの年齢差がある彼らだが、実力や経験の差を感じさせない堂々としたライブを披露した。

Taiko Super Kicks は、昨年2015年のフジロックにルーキーとして出演し、その年の冬には待望のファースト・アルバム『Many Shapes』が発売されたが、その当時よりさらに骨太な音楽を鳴らすようになり、対比して彼らの持つ独特の浮遊感がさらに色濃く感じることができるライブとなった。

taiko super kicks

taiko super kicks


そして、”カリブ海のキャプテン・ビートハーフ”と評され一部の音楽ファンや関係者の間で絶大な人気を誇るAlfred Beach Sandalは、北里彰久(Vo,Gt)を中心に、多くのバンドのサポートを務める光永渉(Dr)と岩見継吾(Wb)をサポートに迎えたお馴染みのトリオ編成。確固たる安定した演奏の中、誰にも真似できないフリーフォーム・スタイル…なのにナチュラルな歌声はどこまでも異彩を放っていた。

Alfred Beach Sandal

Alfred Beach Sandal


そんな若手2組の好演もさることながら、おいしいところを爽快に持って行ってしまったのは向井秀徳アコースティック&エレクトリックと、再度登場した大友良英だろう。

向井秀徳アコースティック&エレクトリック

向井秀徳アコースティック&エレクトリック


トリを務めた向井秀徳アコースティック&エレクトリックの一瞬で空気を自分のものにしてしまうライブアクトは健在。最後にアンコールとして大友良英を招き即興でセッションが行われた。「例によって何も決まっていません。とりあえずやってみますか」と言いながら『ヤりたい女』(ヤりたい女、ヤりたい男と言って続いて女優・俳優の名前を連呼する即興曲)と『The Days of NEKOMACHI』を披露。即興でありながらも大友良英は、向井秀徳のコードに合わせてのギターソロや、弓でギターを弾くボウイング奏法を繰り広げるなどして会場を沸かせた。
(あとから大友氏にお伺いしたところ、事前の打ち合わせや何の曲をやるかなどの共有は一切なく、その場で向井氏が押さえたコードを咄嗟に確認してセッションに臨んだという。さすが! )

大友良英と向井秀徳アコースティック&エレクトリック

アンコール、大友良英の代名詞とも言える即興演奏で向井秀徳とコラボレーションし、会場を沸かせた。


イベントは事前にソールドアウト。世代やジャンルの違いはあれど、彼らの”自由かつ強靭な音楽”に身を委ねて音楽を堪能できる貴重なライブ体験となった。

All Photo by Kikuko Usuyama