【イベントレポート】トクマルシューゴ主催・TONOFON FESTIVAL 2015 潜入レポート


 6月7日、埼玉県所沢航空記念公園野外ステージにて、トクマルシューゴが主催する『TONOFON FESTIVAL 2015』が2年振りに開催された。そもそも「トノフォン」とはなんなのか。これまでTokyo Loco magazineでは、アーティストやその音源の話だけでは手の届かない、かゆいところを取材するニッチな活動を続けてきた。今回はトノフォンの舞台裏に潜入してみようじゃないか…そう意気込んでいたが、さすがは世界のポップマエストロ・トクマルシューゴが主催するトノフォン。夢と魔法の国ディズニーランドが未だに多くの謎に包まれているのと同じく、そう簡単には踏み込めない。取材は困難を極めたが、なんとか会場に潜り込むことができたので、今回は当日のイベントレポートをお送りしたい。

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航空記念公園野外ステージ会場入口。今年は初夏の新緑が映える良い天気での開催となった。(Photo by Hideki Otsuka)

 トップバッターは今回のトノフォンフェスの注目のひとつである明和電機。ユニークな楽器のパフォーマンスに思わず目が釘付けになった。指でパッチンすると自身の背中の羽根の先端についた木魚が叩かれる「パチモク」や、舌(ベロ)を動かしてベンベン音を鳴らす可愛い顔したかぶりもの「ベロミン」などを実演。楽器が身につけられる、ってなんだか変身できるみたいでテンションがあがる。曲も、どことなく戦隊モノのような曲調が多く、つい童心を刺激されて興味津々になってしまった大人も多いのではないだろうか。

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「ベロミン」実演模様。明和電機製品カタログによると、金属の板でできた舌をはじいて音を出し、耳の円盤でその音程を変える宇宙人とのこと。(Photo by Ray Otabe)

 MCでは、自社の商品説明も忘れない。大ヒット商品「オタマトーン」やドラムトイ「Mr.Knocky」なども実演して会場を楽しませていた。土佐社長は、曲に合わせて自らバチでパーカッションを叩くときと振り付けにあわせて踊るときがあるが、あの踊りに合わせて音も鳴らされているようで、興味深かった。観客席後ろの物販では、明和電機の商品も販売されていた。

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社歌に合わせて踊る工員と観客たち。土佐社長のパーカッションさばきも見ものです。(Photo by Hideki Otsuka)

 続いては森は生きている。午後2時に差し掛かる、太陽が西に傾き始めた気持ちの良い昼下がり。正直、居眠りな筆者にとって、このタイミングの森は生きているは最高の昼寝日和だ…失礼ながらそう思ってしまった。しかし、サウンドチェックから流れ込むように始まった彼らの演奏は、大地からなにかうごめくものがフツフツと湧いてくるようなライブだった。嵐の直前に、不謹慎にもワクワクしてしまうあのときの気持ちに似ている。1曲の尺が長く2曲のみの演奏だったが、そのスケールの大きさの片鱗に触れ、今後のライブがますます楽しみになるアクトだった。

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会場の一番前にはゴザが敷かれ、観客は座っても立っても見ることができる。(Photo by Ray Otabe)

 3番目は仙台を拠点に活動するyumbo。噂にはたくさん聞いていたyumboをやっと生で見ることができた。感動に尽きる。男3・女5人による8人編成と大人数だが、寂しさと優しさを纏ったような独特の雰囲気の音楽で、特にヴォーカルの歌に対して真摯に向き合うような佇まいが印象的だった。ありのままの自分をすべて受け入れて許してくれるような音楽。素直に、心が洗われた。

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ゲストに遠藤里美、てんこまつりを迎えた8人編成のyumbo。(Photo by Hideki Otsuka)

 yumbo終了後、「後ろにご注目ください」の合図で振り向くと、なんと会場の席後方には麦ふみクーツェ楽団が!指揮者はトクマルシューゴ、そして舞台の衣装を身にまとい、それぞれのパートの楽器を持った楽団員たち。大勢の観客に囲まれながら、その場で舞台『麦ふみクーツェ』のオープニングを飾る曲「なぐりあうこどものためのテーマ」が始まった。

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観客がひしめく会場席後方にてそのまま麦ふみクーツェ楽団の演奏がスタート。(Photo by Hideki Otsuka)

 トクマルシューゴが音楽監督を務めた舞台『麦ふみクーツェ』は、多くのミュージシャンが役者兼演奏者として参加しており、今回はそのミュージシャンを中心としたスペシャル編成である。ある港町にある楽団。メンバーの役はそれぞれ、肉屋だったり花屋だったり灯台守だったり警備員だったり…いろいろだ。

 管楽器隊の音色はどれも趣があってふくよかだった。打楽器隊は楽器で口が隠れないぶん表情がよくわかるのだが、皆笑顔で叩いていて、その姿を見ているだけで楽しくなってくる。それぞれの楽器に見せ場があった。舞台では日用品を使った楽器が登場するシーンがあるが、この日もフライパンを叩く楽団員がいて印象的だった。

 また、個人的に気になったのは、舞台に出演こそしていないものの、サポート出演のちんどんバンド・ざくろ。普段は華やかな着物を纏い、ちんどんサウンドで昭和歌謡やオールディーズを演奏している4人組らしい。ざくろのメンバーでありクラリネット奏者の斎藤彰子が舞台に参加している縁で、ざくろメンバーも揃って楽団メンバー入りしたようだが、中でもちんどん奏者・織田陽子の持つちんどんは、公式サイトによると、なんと平太鼓・締太鼓・チャンチキ・ウッドブロック・ウッドブロック・クラクション・カスタネットとなんと7つもの楽器がついたちんどんらしいのだ。実際に見たちんどんは、思っていたより小ぶりでカラフルでなんとも可愛い楽器であった。

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トクマルシューゴによる指揮も貴重です。(Photo by Hideki Otsuka)

 最後には舞台の副題にもなっている「everything is symphony! 」を披露。それにしても、客席側でこんなに近くで演奏に触れるのと、対面式で聴くのでは全然違って新鮮だ。途中、ファゴットの素敵なソロがあるのだが、あんなに近くで聴けて最高だ。違いがわかる人間になりたいと思った。曲を終わると、楽団員たちは「麦ふみの歌」を唄いながら私たちが座る会場の座席と座席の間の通路を通ってステージへ向かい、裏へと掃けていった。

 視点を前に戻すと、そこにはセッティング中のneco眠る。さっきまでゴザのあった場所には大勢の立ち見の観客でいっぱいになっていた。途中ベースの弦が切れるというアクシデントもあったが、「伊藤君は良いベースを弾くと緊張するので今日の演奏はあんまり良い見込みがないでしょう」などと冗談を挟み会場を沸かせていた。5年以上ぶりに生で見たneco眠るの演奏に、筆者も大いに心踊らされて、今日はレポートを書くから飲まないと決めていたビールを飲んでしまった。

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最初から大盛り上がりで始まったneco眠る。※写真は弦が切れる前のもの。(Photo by Ray Otabe)

 あっという間に時間は過ぎて、トリを飾るのはもちろんトクマルシューゴ。バンド編成は、イトケン、岸田佳也、ユミコ、三浦千明というお馴染みのメンバーに加え、ベース田中馨の不在のピンチヒッターとして、1983などで活躍する新間功人を迎え、「La La Radio」からスタート。

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夕暮れ前。いよいよ、という歓声が湧きながら演奏はスタート(Photo by Ray Otabe)

 途中、ゲストに先ほど登場した麦ふみクーツェ楽団から、今回参加している楽団員の中で唯一の女優であり、ヒロイン役「みどり色」を演じた皆本麻帆が登場し、劇中歌「いろいろないろ」を披露。この曲、ギターの伴奏がとても美しい曲なのだ。それをトクマルシューゴが弾いて、ヒロインのかわいい女優が歌うなんてそれだけでとってもロマンチックで素敵な光景だが、途中、観客席の後ろから再度麦ふみクーツェの楽団員たちが登場したのには驚いた。 鍵盤ハーモニカ、サックス、フルート、ファゴット、クラリネットそれぞれのパートの楽団員5人が、観客席の中段に幅を取りながら広がって演奏し、そっと花を添えた。終盤、皆本麻帆と観客による「わーお」のコールアンドレスポンスは、会場を幸せな空間で包んだ。

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コールアンドレスポンスを求める皆本麻帆と伴奏トクマルシューゴ。(Photo by Hideki Otsuka)

 また、サックスプレイヤー遠藤里美と、麦ふみクーツェ楽団員としても出演していた小林うてなもゲスト出演し、昨年発表されている最新曲「Lita-Ruta」を披露。お馴染み「Down Down」のメンバーソロは各々の個性が出て、ときに格好良く、ときに笑いを誘った。マルチプレイヤーユミコに至っては、彼女が普段操るどのユニークな楽器でもなく、アニーの名曲「Tommorow」を歌って披露。(これは、トノフォンRadioを聴いてないとわからないネタである。)しかし、トノフォン初アニーの方々にとっても、アニーの「Tommorow」は名曲だってことが伝わったであろう。(そこじゃない。)小林うてなが披露したミニスティールパン?は、果てしなくか細い音を響かせていて、「おだやか〜」とトクマル氏がコメントしたのが面白かった。少しヘンテコな流れだったが「Down Down」の盛り上がりはそのままに「Parachute」が始まると会場から喝采。大盛り上がりでトクマルシューゴバンドのライブは駆け抜けていった。

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左からユミコ、三浦千明、小林うてな。前に置かれたさまざまな楽器も演奏中随時繰り広げられた。(Photo by Hideki Otsuka)

 一幕終了し、さあこれからアンコールの手拍子が始まろうとする瞬間、一番最初に登場したのは、なんとトップバッターの明和電機・土佐社長。自らパーカッションを担いでステージに現れた。トクマルバンドも続いて登場。当日は明和電機とトクマルシューゴのコラボもあるかも…なんて囁かれていたけれど、このタイミングだった。社長の後ろで大急ぎで準備するスタッフたち(配線とか大変そう!)。

 アンコールでまず注目が集まったのが、土佐社長が操る透明なガラス?でできた魚の形をした楽器。骨で繋がった尾の先のハンドルをゆっくり回すと凛々と音がした。(あとで調べたところによると、グラスハープを元にした「グラスカープ」という鯉型の楽器のようだ。)観客一同それに目を奪われるが、そこにギターのイントロと鈴の音が合わさり、トゥートゥールットゥトゥ…とトクマルシューゴがメロディを口ずさむと会場から歓声が沸いた。「Rum Hee 」が高らかに始まり、会場の盛り上がりはピークに。土佐社長はグラスカープに続いてティンパニーで応戦。実際の「Rum Hee」の音源でも途中で繰り出される「ヒュロヒュロヒュロヒュロ〜」といった高らかな音、今回はオタマトーンDXで繰り出されていたが、これが妙にマッチしていて印象的だった。とても素敵なコラボレーションだった。

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グラスカープをゆっくり回す土佐社長。ちなみに、前にある数字が書かれた楽器は、打楽器向けの電動楽器「トントンくん」(Photo by Hideki Otsuka)

 最後はみんな大好き「Rum Hee」のシャワーが会場に降り注ぎ、観客も演者も音楽による喜びに包まれた瞬間だった。止まないアンコールに、最後は主催トクマルシューゴによる「これにて解散!」の言葉で半ば強制的に終了。あっという間の初夏の日曜。書ききれなかったユニークな出店の数々も含めて、音楽が鳴らされる最良の空間があった。

 当初、「トノフォンとはなんなのか」という問いを機にインタビューを敢行するのが目的だった。その目的は達成しなかったが、答えはトクマル氏のブログに端的に書かれていた。

「おれたちの音楽でシーンを盛り上げてやろうぜ」というようなことを言われてもいまいちピンと来ませんが、「音楽そのものをもっと良く響かせたい」と言われたら、そうしたい!と答えたいです。
ブログ『録音日誌』http://st-rec.tonofon.com/ より

 つまり、トノフォンとは、トクマルシューゴが音楽そのもの最良なカタチで響かせ、私たちとそれを共有するための媒介なのだ。そのためには、私たちが知ることのない事務作業や手間、人手も発生しているであろう。だが、そこに踏み込んだところで音楽を共有できるわけではない。いつでも素敵な音楽を楽しむことができる場所、それがトノフォン。またあの場所で、素敵な音楽に会いに行きたい。

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おまけ写真・会場に出没していた可愛らしい謎のキャラクター「コアラのおばけ」の着ぐるみ面をつけたユミコ氏とパンダの着ぐるみ面をつけた三浦千明氏。(Photo by Ray Otabe)

リード写真=Ray Otabe