岩淵弘樹×カンパニー松尾×九龍ジョーによる映画『モッシュピット』トークショーレポート


5月21日より渋谷・ユーロスペースを皮切りに公開された『モッシュピット』をあなたはもう目撃しただろうか。東京アンダーグラウンドシーンと言われるシーンの中心人物・Have a nice day!(以下、ハバナイ) の浅見北斗は、クラウドファウンディングで100万円を集め、恵比寿リキッドルームで1,000人規模のフリーパーティーを実現させた。この映画はその奇跡の一夜に向けて、演者であるハバナイ、カオスティックパーティーバンド・NATURE DANGER GANG(以下、ネイチャー)、2人組アイドルユニット・おやすみホログラム(以下、おやホロ)の3組を中心に、メンバー、スタッフ、そしてコアなファンの面々がそれぞれの思いを語り、それぞれの思いが錯綜しながらも、モッシュピットでひとつになっていく様子を追った映画である。

2016/08/23追記
モッシュピット LIVE VERSIONレイトショー公開決定!
http://www.hamajim.com/news/20160812-210837.php

公開3日目の上映後に行われたトークショーでは、プロデューサーのカンパニー松尾、監督の岩淵弘樹、ライターの九龍ジョーの3人が登壇し、映画の感想などが語られた。今回はその一部始終をお送りする。

ステージの上で演奏している連中よりも、フロアのほうがヤバい

九龍:この映画で良いなって思うのは、東京っていうのがちゃんと地方都市の一つに見えること。東京っていったときに醸し出される巨大な感じとか、特別感とかがなくて、どこの町でも起きうる、あるいは起きている物語に感じられる。
被写体になる人たちも、ミュージシャン含めて、すごくカリスマめいてたり、スターだたったりするわけじゃないんだけど、みんな変な魅力を放ってますよね。

あと、僕は昔から浅見くんの日記がすごく好きなんですけど、何年か前に、ステージの上で演奏している連中よりも、フロアにいる何人かのほうが完全にやばい、みたいなことを書いてたんです。それがすごく同感で、音楽を聴いている人間の内側で起きていることって、かなりやばいじゃないですか。なにかに熱中するっていうその爆発力。しかも、それがライブハウスにくるっていう行為につながって、ステージと呼応するかのようにフロアにモッシュピットが起こる。普段からライブへ行く人間はそういうことが起きているっていうのはごく普通のことだって知っていると思うんだけど、それが映画で捉えられていた。ただ、あとはこれがもっと外側に伝われば良いなと思いました。

松尾:界隈のファンたちがやばい・面白いっていうのは浅見さんもそうだったと思うし、岩淵くんもそれを感じているからこそ、リキッドのところをファン中心の構成にしたんだよね。

岩淵:はい、そうです。ライブハウスへ行って知り合ったお客さんの中で面白い人たち…だって、普通キックボードでライブハウス行くとかおかしいじゃないですか。(笑) 

まっち

古くからのハバナイを知るまっちはキックボードでライブハウスへ通う。リキッド公演の一週間前にはライブハウスを駆け巡り、ライブ告知のビラ配りを配り続けた。

九龍:あのシーンが一番かっこいいよね

(会場笑)

松尾:撮影しながら誰かに心動かされたっていうのはあるんですか?

岩淵:最初は浅見さんの話として、ライブハウスにアイドルがいるとか、アイドルのお客さんがどんどん増えてきているとか、そういう方向性で浅見北斗は何と戦っているのかみたいな話で作っていったんですけど、この話じゃ俺はあんまり興味がわかないなって思っちゃって。そのときによっしーくんっていう高校生に出会って、高校から家に帰ってライブハウスに行くっていう素材を見たときに、それがすごくいいなって思ったんですよ。それでよっしーくんの話を置いたときに、演者の人の話とかも重なって見えるような気がしたんで、それが最初の糸口でしたね。

おやホロファンの高校生・よっしー

山梨県上野原に住むおやホロファンの高校生・よっしーは、バイトをしながら溜まったお金で東京のライブまで足を運んでいる。

九龍:ただ、それぞれの人をもうちょい深掘りしてほしいところはあったかな。ミュージシャンに関しても、知らない人が見ても、三組の人間的な魅力や、音楽の魅力が伝わる構成になっていたかは気になる。三組について予備知識抜きに観た人の感想が聞いてみたいですね。そういう意味で、おやホロのあの二人がすごくキラキラしているのはよかった。そんなにおやホロを知っているわけではない僕でも、あの魅力はわかる。おやホロが出てるだけで、画面が活きている感じがしたから。

岩淵:それはちょっとあって。最初、夏の魔物というイベントではじめてハバナイ・ネイチャー・おやホロの三組と一緒に会するライブを見たんです。あのアイドルの子らと、ネイチャーの面々がフランクに接している様子とかがすごくよかったんですよね。それでその美しさを撮りたいなって思ったんですよ。

キャプション:この映像に映った光景がきっかけに、プロデューサー・カンパニー松尾も彼らに興味を持ったという。(映画パンフレットより)

九龍:あとネイチャーの真剣10代しゃべり場みたいな映像を出すことはいいことなのかって。

(会場笑)

岩淵:あれ、すごくとっちらかっているんですよ。みんな言っていることが違う。

脱退報告をするメグ

公演直前、ネイチャーはハバナイの前座でとどまってよいのかという議論や、メンバーの脱退報告など真剣な話し合いがなぜか街中で座っておこなわれていた。

九龍:まさにしゃべり場の噛み合ってない感じ。でもそれって誰でもすごく身に覚えがあるっていうか。確実に成功する方法なんて誰も知っているわけじゃないから、皆がそれぞれそれっぽいことを言う。それってたいていすれ違いに終わるんだけど、そのあがいたり、必死で生きているんだっていうことは伝わる。ネイチャーらしくていい映像だなと。あれはかなりグッときましたけどね。

松尾:各々ね、みなさんの中で思うシーンもあるでしょう。岩淵弘樹映画っていうなにか独特のジャンルがあるんですよね。今まで見ていると。

九龍:大森靖子さんとの『サマーセール』でも思ったんだけど、岩淵くんの映画ってだいたい被写体に破れていく。それは映画としてどうなんだっていうのと、でも妙な「愛おしさ」があるんですよね。やっぱりドキュメンタリー監督って悪人じゃないとって思うことが多いんだけど、岩淵くんの場合、カメラから優しさが伝わってしまう(笑)。それがドキュメンタリーとしてよいか悪いのかわからないけど、僕はこれはこれで好きです。興行サイドとして松尾さんはどう考えるのかっていうのはあると思いますが。

松尾:なぜ今回これをドキュメンタリーにして映像化しなきゃいけなかったのかっていうのは、僕の中には明確にあって。単純に浅見北斗もしくはモッシュピット界隈を外側に広げるためだけですよね。だってライブハウスは成立しちゃっているし、リキッドも成立しちゃったんですよ。バンド各各はこれから外に出て行くけれども、その足がかりになってほしいですね。

演者も観客も想いは全員バラバラだが、それがモッシュピットでひとつになっていく。リキッドルームのフロアに渦巻いた実際のモッシュピットの様子は、是非とも映画館の大スクリーンで確かめていただきたい。

INFORMATION

『モッシュピット』

映画『モッシュピット』

東京渋谷ユーロスペース 2週間限定レイトショー
2016年5月21日(土)~6月3日(金)連夜21時~
連夜舞台挨拶&トークショーあり!


舞台挨拶、トークショー
5月21日(土)ハバナイ浅見、NDGセキ、NDGゆきちゃん、おやホロ八月ちゃん、おやホロカナミル 舞台挨拶
5月22日(日)ハバナイ浅見×オモチレコード望月慎之輔×D.J.April トークショー
5月23日(月)監督・岩淵弘樹×カンパニー松尾P×ライター九龍ジョー トークショー
5月24日(火)おやホロ八月ちゃん×おやホロカナミル×ライター宗像明将 トークショー
5月25日(水)お休み
5月26日(木)NATURE DANGER GANG 舞台挨拶
5月27日(金)BiSHマネージャー渡辺淳之介×SSTV高根P×カンパニー松尾P トークショー

■ユーロスペース基本情報
上映時間:21時~
入場料金:一般1.800円、大学・専門学生1.400円、会員・シニア1.200円高校生800円、中学生以下500円、リピーター割引(本作半券提示)1.000円
※予約は出来ません。当日朝の営業時間から整理番号付き当日券を発売します。

以降のスケジュールは決まり次第お知らせ。

大阪十三シアターセブン5日間限定レイトショー
2016年5月28日(土)から6月1日(水)まで 20時30分~
※監督岩淵弘樹の特集上映も同時開催!
5月28日(土)19時15分~『サマーセール』52分
5月29日(日)19時00分~『遭難フリーター』67分
5月30日(月)19時30分~『おやすみホログラム「誰かの庭」メイキング&MV上映会』30分
5月31日(火)19時00分~『遭難フリーター』67分
6月1日(水)19時15分~『サマーセール』52分

料金:『サマーセール』『遭難フリーター』1,000円、おやすみホログラム「誰かの庭」メイキング&MV上映会』800円

名古屋シネマスコーレ1週間限定レイトショー
6月11日(土)から17(金)まで 11日、12日は20時15分~13日~17日は19時45分~
※公開初日6/11(土)は監督・岩淵弘樹の舞台挨拶&トークショーあり

京都みなみ会館5日間限定レイトショー
2016年6月27日(月)から7月1日(金)まで
※公開初日6/27(月)は舞台挨拶あり!
監督岩淵弘樹の特集上映も同時開催!
6月27日(月)19時45分~『サマーセール』52分
6月28日(火)19時45分~『遭難フリーター』67分
6月29日(水)19時45分~『サマーセール』52分
6月30日(木)19時45分~『遭難フリーター』67分
7月1日(金)19時45分~『サマーセール』52分

料金:一般1,500円、大学生1,300円、シニア1,100円、会員・小・中・高1,000円

他、順次劇場公開あり。