台湾から渋谷WWWへ。古川麦『far/close』ツアー


ネクラな少年だったので、大学くらいまでは、自分は精神的にみんなより遅れている、と思ってがんばって本を読んだり

――音楽を始めるきっかけとして、作品、人物、モノなど具体的な名前があったりしますか?

古川:音楽で言うと、一番始めに感動したのは、アメリカにいる頃、多分2〜3歳くらいの時にカーステレオで聴いたJevetta Steeleの「Calling You」。弾き語りみたいなことを始めるきっかけになった人物はオザケン半分、ジョアン・ジルベルト半分です。どっちも高校の時よく聴いていた。オザケンの方が先だったかな。

――それより幼い頃は?

古川:歌うのが好きでした、合唱とか楽しかった。カラオケで、安室奈美恵を歌ったりしてました。幼少期には楽器はほとんどやってなかったですね。

――そんな麦少年が、本格的に音楽を始めたのは何歳の時?

古川:本格的に、というと難しいですが、多分中学オーストラリア時代にボイストレーニング受けて、そこからかな、音楽がやりたいと思うようになったのは。丁度同じころギターも始めて、時間ある時は常にギターを弾いていた気がします。それで高校で最初に組んだバンドが、色々変遷を辿って「Doppelzimmer」というデュオになっています。今でも何となく二人組の「Doppelzimmer」を“バンド”って言ってしまうのは高校ノリが残っているからだと思う。高校の時はceroの髙城くんと橋本くんがやっていたバンドと対バンしたり、学校の階段の踊り場でライブやったりしていました。

――今さらでごめんなさい。そもそも、幼少期はどれくらいの期間を海外で過ごしたんですか?

古川:まず0歳でアメリカ、それから多分すぐ日本に。何度かアメリカ行き来して、小学校は日本、中学はなぜかオーストラリアの学校に行って、そこでギターを始めました。中学の後半で日本に戻って、吹奏楽部でホルン。高校はバンドとか始めつつ、オーケストラもやって音楽的にかなり充実でした。大学では色々音楽以外の刺激が強かったかな、イベントやったりしてそれなりに活動しつつ、卒業以降はぶらぶらと今にいたる…と、本当にざっくりした自分史ですね(笑)。

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――幼い頃の海外での暮らしは、どのようなものだった? 海外と日本での暮らしとで、ギャップなどは感じましたか?

古川:アメリカで生まれはしたんですけど、その時の記憶はほんの断片的だし、昔のパスポートを見ると親が冗談で「バク・マイケル・フルカワ」ってミドルネームつけたのが残っているくらい。中学時代にオーストラリアにいて、そこが2年半くらいだったかな? オーストラリアの自然とかおおらかな人々の中でかなりのびのびと過ごして、その分帰って来て結構なギャップありました。まぁそりゃ一番多感な時期のほとんどを同級生と一緒に過ごしてないので色々難しかった面もあるよなと今では思います。当時はかなりコンプレックスだったけれど。

――どこにアイデンティティを置いたら良いかわからない「帰国子女」コンプレックスみたいな話を良く聞くけど、そういうもの?

古川:アイデンティティっていうか、他のみんなが子供じゃなくなる年頃だった、というのが一番大きいかな。話題には全然ついていけるんだけど、ノリが違う、昔はなかった緊張感とかグループ分けみたいのがあったりして、年功序列な感じとか、なかなか受け入れ難いものがありました。それでも自分を肯定してればよかったんだけど、ネクラな少年だったので、大学くらいまでは、自分は精神的にみんなより遅れている、と思ってがんばって本読んだりして、背伸びして老けようとしていましたね(笑)。

――もし楽器や音楽に興味がなかったら、今頃何をしていたと思う?

古川:何やろね…あんまり想像できないですが、勉強はしたいです。というわけで学生?

――最近はスヌーピーに似ているそうですが、それについて何か思うところがあれば…

古川:最近なんですかね…。個人的にはチャーリー・ブラウンかライナスがよかったです。

――個人的にも、それを聞いた時に、いたずらっぽい感じとか、何気に何でも出来ちゃうところとか、楽器上手いとことか、あとフォルムとか色味とか、「あー、色々似てる!」って思いました。

古川:どうもありがとう(笑)、素直に嬉しいです。ただ、フォルム…?

――自然な気遣いが非常に上手い人だなという印象がありますが、ご自身ではご自身のことをどういう風に捉えていますか?

古川:自分をどういう風にですか…難しい質問。昔は早く老けたいと思っていて、自分のいたずらっぽいところみたいのはあまり好きじゃなかったんですが、今は自然に受け入れている感じです。青いかもしれないけど、自分は可塑性が高いと思うし、まだまだ意識次第でどうとでもなると思っています。何でもできる、とは言わないけど、出来ることは多い。だからこそ、人には出来ないことをやりたいなと常々思います。

――3月17日(火)には、渋谷WWWで弦楽四重奏入りフル編成のライブが行われますね。

古川:この日は、対バンにceroの髙城晶平くんのソロを迎えるのですが、彼は『far/close』をかなり後押ししてくれていて、レコーディング開始時のライブに足を運んでくれたりして励ましてもらっていたので、こうして一緒に舞台にたって祝ってくれるのは本当にありがたいです。自分の編成はBaku Furukawa “far/close” Orchestraということで、レコーディングメンバーのドラム田中佑司、ベース千葉広樹に加えて、トロンボーン青木タイセイ、トランペット谷殿明良、コーラス&パーカッション角銅真実、そしてチェロ関口将史率いる弦楽四重奏と、管弦打そろったオーケストラ編成です。この編成でのライブはこの日逃したら次はないかもしれない、くらい豪華です。音源で聴いてくれて気になっているという方も多いと思うので、そこで是非がっつりライブを聴いてもらえたら!! 

――最後に、2015年の抱負や目下の目標などがあれば教えてください。

古川:ライブの後は、少しツアーもしようかなと考えています。『far/close』をゆっくり広めていきたいし、台湾もまた行けたら。と同時に、次回作に向けても動き出しています。シングルも今年出せたらなぁ…。割と具体的な目標多いのですが、大枠で言えば『far/close』で実ったものをちゃんと収穫して、おいしいワインか何かにしていきたい、なんて、今たまたまワイン飲んでいるので思います。2015年もよろしくお願いします!

EVENT INFO

古川麦 “far/close” release live「Coming of the Light」

2015年3月17日(火)OPEN 19:00 / START 20:00
会場:東京・渋谷WWW
料金:2,800円(前売/税込・ドリンク代別)/3,300円(当日/税込・ドリンク代別)