音楽のその先にある表現力を映し出す−多くのアーティストのアートディレクション・デザイン・映像作品に携わる関山雄太インタビュー


アーティストの音楽を聴くだけとかTwitter見るだけとかじゃわからないようなもうちょっと先の、その人の表現力みたいなものを見てみたいから続けているんだと思います。(関山)

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TOKYO ACCOUSTIC SESSION 撮影風景

―― “ACCOMMO” と “TOKYO ACOUSTIC SESSION” (以下、TAS)を始めるのは同じくらいの時期ですか?始めたきっかけを教えてください。

関山: “ACCOMMO” をやったしばらくあとですね。きっかけは、有名なのがヴィンセント・ムーンという監督がやっている “TAKE AWAY SHOWS” っていうビデオです。普通のMVではなく、町中での生演奏をもっとラフに公開してたりとか、アーティスト自身もiPhoneで撮ったようなものをYoutubeに公開したりとか…そういう映像を見るのがすごく好きだったので、それをやってみたいなって思ってTASをはじめたんですよ。

――最初はひとりで立ち上げたんですか?

関山:最初はThe Keysというバンドと始めました。Keysはこの間解散しちゃったんですけど、当時僕がデザインをやらせてもらっていたんです。Keysもそういう映像を作りたいって言っていて「じゃあ撮ってみよう」「サイトにしよう」という流れで立ち上げました。

――関山さんがカメラを持って撮影したんですか?

関山:僕はフィルムカメラで写真を撮っていた事があるくらいで、最初はビデオが撮れるカメラも持ってなかったし、全部人に頼んでやっていました。僕はディレクションで、カメラマンに頼んで撮ってもらい、映像編集も友達にやってもらって、それをYoutubeにあげて僕が公開するみたいな流れで。編集もカメラマンもDJや仕事の仲間で立ち上げました。

――どうやってアーティストをピックアップして撮っていたんですか?

関山:最初はKeysの繋がりとか、僕がデザインとかウェブの仕事をさせてもらった人とか、そういう人選になっていますね。それでだんだん自分も撮りたくなって、ビデオカメラを買って、編集も覚えました。

――ちなみに、場所はどうやって選んでいるんでしょうか?

関山:基本はアーティストの好きな場所や雰囲気で探して選んでもらっています。KONCOSは「目黒川と阿武隈川と札内川の関係」という曲があったので目黒川で撮ったり、磯部正文さんは「普段ここで髪を切ってもらっているからここで」って美容院で撮ったりとかです。

――なるほど。けっこうかわいいお店も出てきて、すごくセンスがいいなって思っていました。撮影って許可を取るのが大変じゃないですか?

関山:個人経営のところは宣伝にもなりますし、すんなりやらせてもらえますね。外はほとんどゲリラです…。

――大変な撮影エピソードはありますか?

関山:may.eちゃんの映像は大変でした。多摩川グラウンドで下見もして場所を決めたんですけど、撮影中に球児がランニングでカメラ前を横切ったり、犬が来て吠えたり、上裸のおじさんがランニングしてたり、そうしてたら熱でカメラが止まったりとか…。10テイクくらい撮ったと思います。夏なのですごく日焼けしました…。でも、おかげですごく良い映像が撮れて、今でも何度か見直してしまいます。

――この映像は、演奏の後ろで球児の掛け声が聴こえて、その雰囲気がすごく素敵ですよね。他に印象に残っているエピソードや作品はありますか?

関山:riddim saunterのウェブサイトを少し手伝っていたこともあって、TASの立ち上げと一緒にKONCOSの映像を公開しました。riddim saunterってずっと英歌詞の曲をやっていたバンドなんですけど、そこでドラムの太一くんがピアノを弾いて、ギターのヒロシさんが日本語で歌う、その映像1つ目がTASで、責任重大だと思いました。

riddim saunter解散後、ギターの佐藤寛とドラムの古川太一によって結成されたKONCOS。曲はThe Zombies「This Will Be Our Year」日本語カバー

関山:あと、小平智恵さんっていう方の代々木公園で撮った映像、この動画がTASの中で一番くらいに好きです。単純に曲が好きなんですけど、日差しがすごいきれいで、たまたま真っ白になっちゃう瞬間があるんですよ。このあともうワンテイク撮ったんですけど、全然綺麗に撮れなくて、はじめの1回が一番良くて。こういう瞬間の映像って良いですよね。

関山:TASみたいな映像ってより人間味が出るじゃないですか。ブログとかTwitterができてよりアーティストの性格とか気質って出やすくなったって思うんですけど、映像でそれがもっと本物・リアルになるというか、アーティストの音楽を聴くだけやTwitter見るだけじゃわからないようなもうちょっと先の、その人の表現力みたいなものを見てみたいから続けているんだと思います。

PICK UP ※ その他、関山さんおすすめのTAS動画を教えてもらいました。

The Keys – Miss The Train
2012年4月1日。TASの記念すべき最初の映像です。たしかサイトの名前も決まっていなくて、とりあえずカメラマンや仲間を集めて撮ってみた映像。この1テイク目で後ろでおじさん踊っちゃってるし、観光に来た人が記念撮影をはじめちゃうし、一番良かったテイク。

宮本菜津子 – 鳥とリズム
撮影場所が阿佐ヶ谷住宅という古い団地で建築や空間が独特な雰囲気でファンも多い場所なのですが、再開発による取り壊しと反対で人も少なく時が止まったような場所です。撮影の日は桜が満開で、たまたまこの日に、元住人や現住人が集まってお花見をしている日でした。宴会に参加させてもらって、再開発が終わって阿佐ヶ谷住宅に戻ってこれるようになったらまた集まろうと約束しました。

ayU tokiO – 恋する団地
この曲の舞台になった場所で、アユ君の地元です。撮影中にアユ君のお父さんがたまたまテニスの帰りに通ったので、息子とやりとりをこっそり撮りました。同じ曲のMVも作らせてもらって嬉しかったです。

――次に、ミュージックビデオ(以下、MV)についてお伺いします。最近はMVの仕事も多いですが、初めて撮ったのはどのアーティストの作品なんですか?

関山:初めてMVを撮ったのはKONCOSです。カメラマンの山川哲矢にTASを撮ってもらっていた流れで、KONCOSから「やまてつ(※山川哲矢)と関山でMV作ってくれ」って頼まれたんですよ。TASの運営とMVを作るディレクションって全然違うから不安だったんですけど、頼んでくれたからやってみようと思って。KONCOSがMVで僕を使ってくれたのはかなり大きかったと思います。

――アーティストと打ち合わせをするときはどのように進めるのでしょうか?基本的に、関山さんが曲を聴いてアイディアを出すんですか?

関山:バラバラでアーティストから出る場合もあるし、僕が出す場合もあります。
ずっとウェブデザインをやっていたので、MVとウェブデザインって似てる気がするんですよね。案を2〜3案出して、あーでもないこーでもないって相談して、実際に撮影したら・コーディング(サイトを見られるようにする作業)をしたらどうなるかを想像して。MVって今はYoutubeで見るのがほとんどだから、サイトも最終的にお客さんに届くのは同じパソコンやスマートフォンの画面上だし、MVもウェブサイトもほぼプロモーションが目的だし、似ているからすんなりやれたような気がしますね。

――MVを作る過程でうまくいかないことはあったりしますか?

関山:それに関してはTASがすごく修行になりました。サイトを立ち上げた当初は週1更新を守ってやっていて、もうほんと大変すぎたんですけど…手振れのしない方法とか、現場の立ち回り方とか、カメラの色を合わせる方法とか、音を綺麗にとる方法とか…。機材もどんどん増えていきました。

――最近の作品を見ると、モデルの華歩さんを立て続けに起用されてますよね。この方も個人的な繋がりで出演してもらっているんですか?

関山:NohtenkigengoのMVがはじまりです。たまたまTwitterで知ってて、華歩ちゃんに出てもらったら面白いねってダメ元でメールしてみたら出てもらえることになりました。

――ということは、いきなり声かけたんですか?

関山:いきなり声かけました。映像にバンド以外の役者さんとして出てもらう事も初めてだったので、打ち合わせでいろいろ相談をさせてもらったんですが、こういう衣装がいいんじゃないかとか、こう撮ったらどうかとか、華歩さんからいろいろアイディアを出してくれて、若いけど受け身じゃないんですよね。一緒に作ってくれるというか。だから現場もすごくやりやすくて。人としてもすごく信頼しています。