見ためは少年ジャンプ!中身はXXX?:月刊ウォンブ!インタビュー


東京は他の都市と比べても圧倒的にライブハウスが存在する。毎日・毎週ライブイベントでライブハウスはてんやわんやである。しかし多くの人は、学業なり仕事なりの日常を経て、出演者の面子、チケット代、場所…などさまざまな条件を天秤にかけて、ようやく予約やチケット購入に至る。近年の音楽フェスなどは日に日に全国各地でさまざまなバリエーションを見せ活況を呈しているが、平日にライブハウスに行くというのは、関係者でない限り気軽に参加できるにはほどほど遠いのが現状だ。そんな障壁をぬぐい去るがごとく、ライブへ行くことがもっと気軽でカジュアルなものだと感じさせ、さらにインディーズシーン必聴の音楽が楽しめるイベントが、2013年毎月最終火曜日に渋谷で開催されていた。それが『月刊ウォンブ!』である。ライブといっても、そもそも場所がライブハウスではなくクラブ、ステージにはなぜかプロレスリング。レスラーさながらリングに立つアーティストと、それに応戦するような観客たち(これが意外と絵になる)、回を重ねるごとに増えていく出店者たち。そんなアーティストもリスナーも一体となって楽しんでいたイベントが本とDVDになったということで、主催の仲原達彦にウォンブのイベントから書籍化に至るまでの話を聞いてきた。

取材・文 / 藤森未起 写真 / 寺沢美遊

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月刊ウォンブ:プチロックフェスティバル、TOIROCK、下北沢インディーファンクラブのブッキングなどを手がけてきた仲原達彦が主催した、渋谷のクラブ「WOMB(ウーム)」で行われた月1開催・12回完結のマンスリーイベント。「ウォンブ」名前の由来は、「WOMB」が「ウーム」と読めないことから。この度10ヶ月のときを経て、イベントに出演した全ミュージシャンのライブ映像が約2時間収録されたDVD付きで書籍化。本作には漫画家・イラストレーター・出演者などのアーティストによる漫画・コラム・インタビュー等が収録。2014年10月10日発売。http://gekkanwomb.com/

一年前でも一年後でもあまりうまくいってなかった。場所の提供っていう意味ではすごい良かったんじゃないかなと(仲原)

――まず、リリースの経緯からお窺いしたいんですが…どうして出そうと思ったんですか?

仲原:出そうと思ったのは、ロゴがジャンプのパロディだったから。

――え、もうそれだけ?(笑)

仲原:それだけです。(笑)もともと1年経ったらDVDを出そうと思っていたから、初回から映像のスタッフにお願いしてちゃんと収録してもらってたんですが、それをどうやって出そうかなって考えたときに、ロゴがジャンプなわけだし、どうせ作るならジャンプと同じサイズで出して、ジャンプと一緒に本屋で並んでほしいなと。だからDVDではなく書籍として出す事にしました。それを考え始めたのは10月くらいですね。

――ウォンブが終わりかけのときですね。

仲原:そうですね。ウォンブが終わってからすぐ取りかかろうと思っていたので、12月には映像編集のお願いしてて、2月くらいに編集は全部終わってました。漫画家さんには12月の頭にお願いしてました。

――かなり早い段階でそこまで進んでたんですね。

仲原:内容の話は進んではいたけど、どこから出版するかは決まってはいなくて。いつ出るとかどうやって出すと詰めが全然出来なくて、時間かかっちゃいました。

――出来なかったのは何か理由があったのですか?

仲原:発売日が決まっていなかったし、締め切りもきちんとなかったから、ダラーッとほんと1年間かけて作っちゃった感じで、最後のほうはもうデザイナーさんが、これ以上やってらんないから出すぞってケツ叩いてくれて(笑)

――ダ…ダメじゃん!(笑)

仲原:ほんとにダメを尽くした結果、10月になっちゃった。あと、自分が担当してるインタビューが何本かあったけど、それをあげるのが遅れたりとか、追加で何かやりたくなったりとかで、時間かかりましたね。もうちょっとやり直したりとか、いろいろとかで、権利関係のこととかでも遅れたりだとか…。

――追加の作業はいつごろにやってたんですか?

仲原:もうずーっとダラダラと(笑)

――2013年、1年間ウォンブやってて私は仕事の関係で最後しか行けてないんですが、どんどん盛り上がってる雰囲気はtwitterや口コミでいっぱい伝わってきて。けっこうタッツ君の知名度もあがったんじゃないかなと思うんですが、イベントの影響とかありましたか?

仲原:僕は基本的に自分を表に出してイベントをやるってことにメリットを感じていたので、ウォンブの宣伝アカウントを作ったりしないで自分で告知していました。僕がやってるイベントだから信頼される、じゃないけど、僕が主催だ、って表に出してたからお客さんはついてくれたと思う。それが有名っていうのはまたちょっと違うと思うんだけど、ウォンブを1年やって僕にお客さんがついた結果っていうのが、ライヴ・イン・ハトヤ(※1)で。ウォンブの信頼と実績があったからこそ、ハトヤも面白いだろって思われたからソールドアウトしたんだとは思います。

――ライヴ・イン・ハトヤは集大成的な感じだったんですか?

仲原:そうでもないですね。割と打ち上げみたいな感じ、ウォンブの。基本的に毎回、イベントごとに自分のできる精一杯をやるから、ハトヤにしてもその時点での一番のベストはハトヤであるのは間違いないんですが。個人的にはそのあとやったビーサン大好き芸人(※2)っていうイベントをやって、あれも集大成ではないけど、僕にしか出来ないことが出来たなと思うので、ああいうことをもっとやりたいとは思いました。

――月間ウォンブからライヴ・イン・ハトヤ、ビーサン大好き芸人と、その一連の時期にかけて、ミュージシャンとタッツ君が東京を中心としたインディーズシーンをものすごく盛り上げている印象がすごくありました。

仲原:僕がウォンブに出た人たちと関わるようになったのは、ここ2〜3年の話だけど、その間にみんなちゃんとCD出したり、ライブの規模が大きくなったりとか、ステップアップをちゃんとしてるから、やっぱり今、盛り上がらないとダメな時期で。そのタイミングで一年間良いイベントができた感じ。一年前でも一年後でもあんまりうまくいってなかったかも。場の提供って言う意味ではすごいタイミングが良かったんじゃないかなと思います。

――ちなみに今の2014年のイベント状況ってどうなってるんしょうか。そういう場や、タッツ君みたいな人がいたりするんでしょうか?

仲原:どうなんだろう…シャムキャッツの『EASY』もそうだけど、わりとアーティストが積極的に動いてるっていう印象が強いかも。僕より若い世代の人たちが特にそうだけど、アーティスト自身が自分たちの見せ方とかをよく分っているというか、表に出るすべを知ってるというか、twitterにしろsoundcloudにしろbandcampにしろ、そういうのの取り込み方がうまいなぁと。その若い世代の子たちと、僕たちの世代とその一個上の世代がいろんなところで絡む機会が多かった気がする。『EASY』とか見てると特にそうだし、シャムキャッツの夏目君とか話してもやっぱりそういう感じする。他にも、『booked!』とか。今年、『インディーファンクラブ』が無かったのもひとつの影響かも。

――EASYについては、このサイトのインタビューでもハトヤの話が出てきてます。みんなが一つの場所に集まって、インディーズのミュージシャンの演奏と、その場を楽しむみたいな。

仲原:インディーズの狭いサークルみたいな部分を、ネガティブな要素で捉えなくなってきている部分はあって。無理して変なところと関わるっていう感覚はみんななくなってきてるんじゃないかな。お客さんもわりとそれを求めてないっていう。

――今はイベントは、『新曲の部屋』とかやってるんでしたっけ?

仲原:そうですね。『新曲の部屋』っていうのは毎月、阿佐ヶ谷のrojiでホライズン山下宅配便の黒岡さんとやってるんだけど、すごく面白くて。最初はまた毎月やるのか、って思ってたんですが。(笑)それ以外にもイベントはちょこちょこやっていて。関わってるミュージシャンのツアーを組んだり。相談されることも多くなってきてる。対バンちょっといい人いない?とか、繋いでくださいって頼まれたりとか、ブッキングで協力してます。

 

※1:ライヴ・イン・ハトヤ…「伊東にゆくならハトヤ〜」でお馴染みの伊東温泉・ハトヤホテルにて行われた1泊2日宿泊食事付きディナーショー形式のライブイベント。200人以上予約がないと催行されない条件を見事達成。出演者はneco眠る、片想い、やけのはら、Dorian、VIDEOTAPEMUSIC、柴田聡子、高城晶平(cero)、パッションフルーツ(Alfred Beach Sandal、王舟、oono yuuki、夏目知幸(シャムキャッツ)、森雄大(neco眠る))2014年2月1日〜2月2日開催。
http://entame.knt.co.jp/live_in_hatoya/

※2:ビーサン大好き芸人…ビーサンことAlfred Beach Sandalを愛してやまない人々が、ビーサンへの溢れる思いを喋り続けるまさかのトークイベント。登壇芸人にはトクマルシューゴ、高城晶平(cero)、シャンソンシゲル、黒岡まさひろ(ホライズン山下宅配便)、岸田佳也、川辺素(ミツメ)、片岡シン(片想い)、オラリー(片想い)、写真家の植本一子、音楽ライターの松永良平。ゲストはチェルシー舞花。司会は主催の仲原達彦と新間功人が務める。130人限定ソールドアウト。
http://love.alfredbeachsandal.com/