日常のその先にひろがるDIYフェス– 静岡・フジサンロクフェス・イズヤングフェスの現場から


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部活帰りにたまたま通りかかった高校生が走ってきてステージ前のモッシュに加わってきたときはバンドの使命のひとつをまっとうできたなぁと(高梨)

高梨:ハタチくらいのときから、地元の伊豆で野外フェスやりたいなって思っていて、でも自分たちのバンド全然売れてないし、無理だよなーって。でも5年くらい前、ある時ネットサーフィンをしてたら、フジサンロクフェスというイベントを見つけて…もしかしたら俺でもできるかもしれないって、勝手に背中を押してもらってイズヤングフェスを始めました。

ヤングはもともと乍東十四雄(さとうとしお)という名義で発足、伊豆の山奥に「かわいい女の子スタジオ」という名のプライベートスタジオを設立し、静岡・東京を中心に活動していた。2008年にはFUJIROCKの新人ステージ<ROOKIE A GO GO>に出演、全国流通盤も発売されている。一旦はレーベルに所属していたものの、最終的には「自主」を貫き、2012年3月にヤングと改名。この年の5月に第1回イズヤングフェスが開催されることとなる。

イズヤングフェスの良いところを、フジサンロクフェス主催の鈴木はこう語る。

鈴木:最高なロケーションに、あれだけの空間を創造して、素晴らしい音楽が鳴っていて、しかも無料…。完全にイっちゃってます。心意気がすごいなぁと思います。あれこそ『フェス(祭礼)』と呼ぶべきです。ステージ裏が川という自然環境の良さが本当にいいと思うし、生活の延長にお祭りが築かれているような印象が最高に共感できます。

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イズヤングフェスは、今年に入って募金も始めているが、参加費は無料、スポンサーもなしと謳っている。その代わりに彼らは音楽活動を通し、イラストレーターstomachache.を起用したコンセプチュアルなグッズなどを販売し、グッズ用のプロモーション映像も作っている。オンライン上でも購入できるようになっており、ヤングはそこで得た収益をイベントの費用に充てている。(運営の詳細はIZU YOUNG FESのブログ「IZU YOUNG FESのつくりかた」に掲載されているのでここでは割愛したい。)

会場最寄り駅である伊豆長岡駅から会場までのルートの写真からは、自然いっぱいに田園風景が広がっているフジサンロクの鈴木家の地域に比べて、人工の建物も多く見られ、生活の足跡を見ることができる。そして、良くも悪くも地方独特の哀愁を感じさせられる街並みを抜けるとパッとなだらかな河原が広がり、それがイズヤングフェスの会場だ。音楽のひろがる場所が、日常の延長線上に存在する。

――地元の人の反応はどうですか?

高梨:来場者数は地元の方が150人くらい、その他全国から150人くらいの総勢300人くらいです。地元でもあまり宣伝していないので、見つけてくれた人と、たまたま通りかかった人が来る感じです。伊豆以外から来る方々は比較的若い人が多い傾向ですが、地元の方々は小さい子供連れのファミリー、高校生、老人が中心です。各々自由に楽しんでいってくれています。部活帰りにたまたま通りかかった高校生が走ってきてステージ前のモッシュに加わってきたときはバンドの使命のひとつをまっとうできたなぁと感動しました。あと、ここ二年程、地元のラジオやwebニュースにも取り上げて頂いて、今回はライヴの一部をラジオで生中継したり、年々地元との関わりが強くなっています。

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――鈴木さんはイズヤングフェスの存在を最初知って、どう思いましたか?

鈴木:最初に『イズヤングフェス』の字面を見たときは一歩引いてみたというか、なんか無駄にライバル意識を感じました。笑。イズヤングに行くきっかけを作ってくれたのは、僕の幼馴染である中越渉くん(DJマシュマロ)です。彼は高梨くんのお兄さんの経営する『ラーメンろたす』の常連さんで、自然と高梨くんとも繋がりが生まれていたようです。そんなこんなで、いざイズヤングフェスに行ったらもう、本当に最高だった…。最高すぎて、気づいたらパンツ一丁で狩野川を泳いでました。

 ※『ラーメンろたす』…ヤング高梨哲宏の兄が経営する地元で評判のラーメン屋。毎週水曜と木曜は別のれんとなり、ヤング高梨の切り盛りする創作ラーメン店『ラーメンだんす』を営業している。

高梨:友達の紹介でラーメン屋出店という形で2012年のフジサンロクフェスに参加させてもらい、そのご縁で鈴木さんが2013年のIZU YOUNG FESに遊びにきてくれて、その場で「フジサンロク出てよ!」と誘ってくれました。

こうして2014年、ヤングはフジサンロクフェスへ出演。そして今回取材という形で参加させていただいたイベント『little expo』が、阿佐ヶ谷Rojiで行われることとなるのである。