ドキュメンタリー映画監督がAVメーカーハマジムに転職!? 昆虫キッズ、スカート、どついたるねんを撮り続ける映像作家・岩淵弘樹インタビュー


AVのハメ撮りで磨いてきた映像のセンスがライヴでも生かされていて、映像を見てドキドキします。

――最後の段落では、ハマジムに入った経緯をお聞きしたいんですが、ハマジムに入る前は介護の仕事をされていましたよね?

岩淵:『遭難フリーター』を撮った後に執筆や映像の仕事がちょっとあったんですが、その頃24〜25歳くらいで何の力もないくせにそういうことやっててもだめだったんですよね。その頃にたまたまメジャーなバンドの撮影があったんですけど、どうしても嫌になってしまって、撮影の直前にドタキャンしたら、そこでの仕事も全く来なくなりました。そりゃそうですよね。収入自体がなくなっていって、それで仕事探そうってなった時に介護の仕事をやり始めたら性に合ったって感じですね。
 

――以降は介護の仕事をしながら映像を撮っていましたが、結婚した2日後にAVメーカーに転職っていうのはすごいジョブチェンジです。カンパニー松尾さんから誘われたとのことですが、どんな風にお誘いがあったんですか。

岩淵:松尾さんからお茶しよう、って言われて、めったにないんですけど、行って、3つくらい議題があると。世間話をひとつふたつして、「松尾さん3つめって何ですか」って聞いたら「岩淵、ハマジム入る? 」って言われて。超入りたいって思ったんだけど、その場ではまず奥さんに相談させてくださいって言いました。家帰って奥さんに話したら、やりたいんだったらやればいいじゃん、ただ条件面だけは詰めてって言われて、条件も折り合いがついたからハマジムに入らせて頂いたと。

――リニューアルされたウェブサイトの担当だとお聞きしました。お誘いを受けたときもその話はあったんですか。

岩淵:これまでもハマジムが運営する動画サイトはあったんですが、そのサイトを全面リニューアルし、『テレキャノ』でハマジムを知ったお客さんにも、ハマジムのAVが面白いことを知って、見てもらえるようなサイトの編集長をやってみないかと松尾さんに言われました。具体的には、平日は毎日無料のコラムや映像が更新されて、ハマジムのAVも最新作から古いものまで、一本単位で購入できるサイトです。定額で見放題のプランもあるので、テレビや映画じゃ見れないAVの面白さを堪能できるようなサイトにしたいです。松尾さんやバクシーシ山下監督の絶版になっている過去の名作も見れるようになる予定です。

――ハマジムはAVメーカーでもありながら、松尾さんが豊田道倫さんの映像を撮ったり、音楽レーベルもやったりしていますが、そういうのが好きな人が集まってる場所なんですか。

岩淵:ハマジムには、主にカンパニー松尾さん、タートル今田さん、梁井一さん、の3人の監督がいるんですけど、入って色々話を聞いたら、梁井さんは昔RAW LIFE※に行ってたり、今田さんはGellersとかトクマルシューゴさんをデビュー時に撮ってるんですよ。で、今田さんの最初のAV作品にはGellersの音源が使われてたりとか。だから、今の環境はすごく楽しいです。

※ 2004年から2006年にかけて、新木場・夢の島や君津市の廃墟ビルなどで開催されていた伝説的なDIY音楽フェス。

――最近では、Have a Nice Day! やNature Danger Gangなどのライヴ映像をハマジムの映像監督と一緒に撮っていますが、今までひとりで撮っていたときと違う点とか、気付かされた点ってありますか。

岩淵:俺が好きなライヴ映像って、撮ってる人の気持ちがむき出しのやつが好きなんですよ。ワンカメでも今こいつ興奮してるんだなとか、撮ってるやつがフー!って言っちゃうようなやつ。今田さんも梁井さんも撮ってる人への距離の近づき方が半端ない。そういう映像を一緒に撮ってくれるので好きです。普通ステージ上がらないじゃないですか。平気で上がるんですよ、今田さんは。この間のNature Danger Gangのライヴのときも、メンバーがみんなステージの最前列でばーって並ぶじゃないですか、そこに立ってるんですよ、メンバーみたいに。(笑)それがすごいなって。梁井さんは最初は引いて画作りをしてるんですけど、ライヴの沸点が上がると最前線に飛び出して迫力をモノにするし、松尾さんはライヴの最中の一番画になる部分を的確にとらえる。しかも1カメで成立するようにシームレスなんですよ。AVのハメ撮りで磨いてきた映像のセンスがライヴでも生かされていて、映像を見てドキドキします。

最近では、Have a Nice Day! など東京アンダーグラウンドシーンにも積極的にコンタクトをとり、ライヴ映像がアップされている。

――ハマジムとして今後も音楽作品を出していくことはあるんですか

岩淵:出るといいんですけどね。松尾さんが撮った豊田道倫さんじゃない人のMVだったり、梁井さんとか今田さんが撮ったミュージシャンのドキュメンタリーとか。絶対AVで培ってきた撮影方法で作ると思うんですよ。だって『どついたるねんライブ』って発想しないじゃないですか。ライヴとセックスを同時にするって。すごい驚いたし、あの現場の熱を逃さないような、接ぎ目が見えないような編集にも度肝抜かれました。

今年CDデビュー20周年になる豊田道倫「そこ座ろうか」のMVは、カンパニー松尾と岩淵弘樹で撮影されている。

――『どついたるねんライブ』の撮影はどうでしたか?

岩淵:撮影するのにあんなに汗かいたライヴははじめてだったし、終わった後もずっとカメラが湯気でもやっとした画になっちゃう感じとか。お客さんの熱もそうだし。最後マイク壊れましたからね。

――最後に、ハマジムでなにか作っていこうと考えている作品はありますか。

岩淵:ないですけど、ハマジムの人たちと面白いものを作れたらいいなって思っています。映画って一発目は自分だったり自分の家族だったり身の回りのものを撮ってできるんですよ。でもそのあとの二本目がなかなかできないって言われてて。俺もそうで、『遭難フリーター』で自分のことだけ撮って、その後、映像とか映画作りたいって気持ちがあっても、その気持ちだけじゃ何もできないじゃないですか。だけど、豊田さんとか、高橋とか、そういう人がいて、そういう人を好きで撮っていたらいろいろなものに伝染して、ずっといまだに撮影を続けられてるっていうのは、恵まれてるな、生かされてるなと思ってます。それだけです。

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